百合とメガネと大体駄文

ブログ名のとおりです

このレズセックスがすごい!2023

皆さんごきげんよう。今年もこの季節がやって参りました。
年越しまで2時間を切った中、大慌てでこの文章を書いています。
今年は自分が百合を追いかける力が衰えてきたことを感じており、かなり取りこぼした作品も多いなと自覚しております。

具体的には、今年あった百合的なニュースを全く覚えてないのです。
出版社の動向だと

  • 河出書房新社が本気で百合をやろうと百合短編集「wiz」を刊行
  • 祥伝社が「照子と瑠衣」「夜の向こうの蛹たち」などを刊行

くらいがパッと思いつく限界のところです。毎年どこかしらの出版社が百合に参入してくれるのは本当にいいことですね。それが続いてくれたらもっと嬉しいのですが。

あといい加減この記事タイトルやめたいです。来年にはなんとかします。

レギュレーション
このページでは以下に該当する作品を対象としています。

  • 2023年に書籍化した単行本
    • 収録作の初公開日は考慮しない
    • シリーズものの2巻以降と同人作品は対象外

漫画編

冷たくて 柔らか

冷たくて 柔らか 1巻の表紙画像

間合いを大事にした、丁寧で繊細な社会人百合漫画です。
同棲していた彼氏にフラれた宝は、中学時代の同級生であるエマと再会する。雰囲気も昔とは大違いのエマを見ながらも、たからちゃんたからちゃんと嬉しそうに話すところは相変わらず。宝はエマと会ううちに、中学時代のふとした瞬間を思い出してしまうのです。
この作品はとにかく「間(ま)」を大切にしていると感じます。もう一度タイトルを読んでみてくださいよ。「冷たくて 柔らか」。冷たくて“、”柔らかじゃなくて、冷たくて“ ”柔らかなんですよ。句読点を使わず、空白という間を作ることでここまで余韻が残るタイトル、すごい。
もちろんタイトルだけじゃなくて、作中の間合いにも注目しましょう。
中学生から大人になって再会するまでの間。エマちゃんと宝ちゃんがやりとりする中で生まれる間。
その生まれた間を埋めるのが、キャラの心理描写なんですよ。
この間合いと心理描写がとにかく美しい。

ここにココハナ編集部が1巻発売記念で作った最高のプロモーション動画を貼り付けて締めたかったのですが、ココハナ編集部がその動画を消したようで頭を抱えています。30回は見たくらいには好きな動画だったのに、許さん。

この恋を星には願わない

この恋を星には願わない 1巻の表紙画像

幼馴染の男女3人組の冬葵(ふゆき・女)と瑛莉(えり・女)と京(きょう・男)。ある日、京が瑛莉に好きだと告白してから崩れていく3人の関係を描いた話です。
とにかく冬葵から瑛莉に対する片想いがとにかく大きいんです。幼少期からの付き合いだから故に、過ごしてきた時間も長いため、密度がすごい。その片想い度合いを繊細なタッチのイラストで描いていくものだから、いかに冬葵がどういう思いで瑛莉との付き合いをしてきたのかがひしひしと伝わってくる。そして瑛莉は冬葵に呪いみたいな約束を幼少期からしていくのよな……
どうか冬葵が幸せになって欲しい作品です。

シルフの花姫

シルフの花姫 1巻表紙画像

優しさで人を包む、ファンタジー百合漫画。
姫様と、姫様に支えているシスターのお話です。
ファンタジー作品と聞いて思い浮かべるものは色々ありますが、そのファンタジー作品の良さでもあり人を跳ね除けてしまうところが設定の細かさでしょう。
この漫画はとにかくゆるいんです。無理して頑張る姫様を、陰からひょいひょい助けるシスターの関係がとてもいいんですよね。主従関係でなく、「私がほっとけないから」で動き回るシスター。身分と職の違いはあれども、これだけ友愛で動く作品はすごい。
たまにキャラの表情が死ぬところもポイントです。かわいい。

ステラ⭐︎レコード

ステラレコード 1巻表紙画像

女子大生のやや初々しさもあるピュアな百合漫画。
みなさん、しおやてるこ先生の漫画は読んだことありますでしょうか? 「アタシのせんぱい」「変と乱」など、サイコ寄りでスリルある百合漫画を描かれています。
その人が出した漫画ゆえに「どうせクレイジーなんでしょ?」と思ったら超ハートフルな漫画でした。
中学生のときにエログロ漫画をきっかけに仲良くなった律(りつ)と杏子(あんこ)。二人で田舎を脱してルームシェアをしていたある日、酔って帰ってきた杏子に律が告白をします。男と遊びまくってた杏子と、中学生から杏子に片想いを続けていた律の一筋縄ではいかない純情な恋のお話です。途中、めちゃくちゃ噛ませ犬なキャラが出てくるんですけど、このキャラの登場によって二人の仲がグッと近づいて親密になる感じがいいなぁと思いました。

破滅の恋人

破滅の恋人 1巻表紙画像

学校じゃ幽霊屋敷と言われてる謎の家に訪れてしまった少女・ありすと、その屋敷に住んでる謎のお姉さんのお話。
郷本先生の作品を読むとき、毎度不思議な感覚になるんですよね。作品の中には没入しているけども、客席から演劇を見るようにどこか一歩引いたところで読まされているような。これも例に漏れず、淡々と進んでいく話をどこかで眺めていくような感じの作品です。
謎のお姉さんがずっと謎ですし、ありすもありすでありすしている。今後急展開するとは思えないけど、この作品の没入感が好きなので。

雪解けとアガパンサス

雪解けとアガパンサス 1巻表紙画像

どこか孤独な女子校の王子様と、その寂しさを埋めてくれる転入生の話。
女子校の王子様である夏月(なつき)。周囲から高嶺の花と称され、その近づきにくさ故に仲が良い人がほとんどいないという状況。そこに夏月の事情を知らない転校生である春(しゅん)が夏月に近づき、夏月は自分の孤独さの理由が友達がいないことだと知ります。女子校でできた初めての友達、春とのやり取りに困惑しつつも、心がときめいて行く夏月を描いたお話。
女子校の王子様キャラに近づきにくさってあるよね、じゃあそこから真の友達がいないなら面白くない?という発想は今までになかったです。一本取られた。この夏月の設定と子犬っぽい春の相性がとても良くて、構成が良くできているなと思いました。次にくるマンガ大賞2023にもノミネートされてたっぽいので今後の行方が楽しみですね。

ネコと海の彼方

ネコと海の彼方 表紙画像

引っ込み思案の私と仲良くなってくれた女の子のお話。
台湾からの百合漫画です。綺譚花物語を作った星期一回収日さんと楊双子さんのタッグで再び書籍化です。
クラスでもいじめられていて学校が嫌いな筱榕(シャオロン)は、クラス替えで前の席になった女の子、可蔚(カーウェイ)の髪を不意に触ってしまいます。クラスで人気もある可蔚ですが、「クラスで一番の友だちは筱榕」というくらい、二人の交友関係は深くなっていきます。しかし翌年のクラス分けで二人が別々になってしまい、今までの交友関係もだんだん途絶えていきます。久々に声を交わした日を最後に、二人の日々が崩壊するのでした。

見てこの楽しそうな表紙! 読了後に見るとそれはそれは悲しい気持ちになるので今のうちにしっかり見ておきましょう。
筱榕(シャオロン)と可蔚(カーウェイ)が仲良くなる過程が本当にいいんですよね。「言いたくなかったらネコ語で喋ろうよ!」とアプローチを掛けてくる可蔚の優しさがいい。
この表紙からは想像できないこの二人の顛末を見届けてください。私は1時間くらい動けなくなりました。

おしえごと

おしえごと 1巻表紙画像

同人作家の教師と美術の才能があるギャルのお話。
今年も百合に参入してくれるレーベルが出てきて嬉しい……
なんとボニータ・コミックスという女性誌レーベルからの単行本化ということでとても期待できますね!
美術の才能を持った不真面目なギャル恋白、その彼女が「私もこんな絵を描きたい」と見せてきたのは、教師である幸の創作アカウント、サチのイラストだった。
私が作者だとバレぬように咄嗟にごまかし、サチは私のは姉と言ってしまう。恋白と(存在しない)姉に扮した幸の関係は如何に。
教師である幸と、幸が扮する姉・サチ、そして恋白という謎の三角関係っぽいものが出来上がっていますね。とにかくこの恋白がサチのことが好きみたいで、サチにアプローチを掛けにいくんですよ。そこで翻弄されるサチ改め幸とのやり取りがめちゃめちゃいいの。
女性誌レーベルって生き残り戦争が激しそうなイメージがありますが、この作品が生き残っているということはそれだけのポテンシャルがあるのかな?と思います。

仕事の後は抱きしめて

 仕事の後は抱きしめて 表紙画像

社会人百合なのだけど、キャラの真っ直ぐさと純情さですべてを解決する漫画です。
食べた人を幸せにしたい気持ちで、小料理屋で修行をしている青田ゆい。そんな彼女は掛け持ちバイト先のオフィスで、会社のマドンナの北条えりこと出会います。恋愛に疎いゆいですが、えりこに誘われるがまま一夜を過ごし、えりこを好きになってしまうのでした。
私は岩下継先生の社会人百合が大好きなんです。
えりこは恋愛経験豊富な人間で、とにかく相手をとっかえひっかえして遊んでいるような人なのですが、そこに純情でウブウブなゆいが引っかかっちゃうんですよね。その純情さや真っ直ぐさにえりこはどこか惹かれてしまいます。途中で邪魔が入ったり、ゆいから身を引く場面もありますが、真っ直ぐすぎるゆいにはそんなものが通じなくって……。

散り損ないのヒラエス

散り損ないのヒラエス 1巻表紙画像

何度でもやり直しながら、二人で自分たちの人生とのケリをつけるお話。
今年のダークホース漫画。百合度合いは薄めですが、とにかく話の作りがすごい。
乙芽に見捨てられないために貢ぎ続けたかずら。しかし、乙芽にあることを告げられて裏切られてしまいます。かずらが死ぬことを意識した時、「一緒に死なない?」と金香に声をかけられ、2人で高層マンションから飛び降りるのでした。
この作品は読者に対して明かされてる手札が少なすぎて、何が起きるかが本当に読めないんです。二人揃った自殺を何度も繰り返すのですがそれでも死ねずに生き返る。それを繰り返して本人たちがこの世に縛られている理由を見つけていくストーリーなんだろうなと思います。マジで面白いんですけど存続が怪しい雰囲気を感じています。どうか描き切るまでは続いて欲しい……。

恋より青く

恋より青く 1巻表紙画像

本を介した不思議な繋がりのお話。
放課後を持て余す女子高生の高峯(たかみね)は帰宅する電車で読書をしていた。ある日、電車内で落とした本を取り違えたことで読書好きの他校の生徒である咲倉(さくら)と出会う。本を介し、帰る電車でのみの交流で、お互いに惹かれ始めていく作品です。
本を読む人間からしたらこういうのって少し憧れますね。好きな本の感想を言い合える機会とか少ないですし。
余談はさておき、放課後の電車の中でしか話さない他校の人との話という作品です。郷本先生とも近いのですが、深海紺先生も割りと独特な雰囲気の漫画を描かれるなぁと思います。(絵のタッチのせい?) 友達と言えるかどうかは怪しいんだけど他人というわけではないといった、うっすらとした関係を描くのが本当に上手いと感じます。1巻の終わりがとても良く、とにかく続きが気になります。
これは本当に余談なのだけれど咲倉のキャラデザが好きすぎる。

小説編

何年、生きても

何年、生きても 表紙画像

皆さんエスはお好きですか? お好きですよね?
美佐の祖母である咲子の着物の謎を、咲子のノートから紐解いていくお話です。
咲子のノートでは、養子先である家の瀧子さんと姉妹として仲睦まじい様子が描かれています。二人はミッションスクールの女学生として生活していきますが、戦争の影響で彼女たちの生活は一転してしまいます。美しいものが好きな瀧子は日に日に弱っていき、そのお姉様を元気づけるために日々頑張る咲子の関係が本当に良いエスなんですよ。災禍の中を生きる瀧子と咲子の姉妹愛を見届けてください。
そして、この姉妹愛に勇気づけられた美佐の決断も見届けてください。

新装版 幽霊列車とこんぺい糖

新装版 幽霊列車とこんぺい糖 表紙画像

飛び込み自殺をするはずのローカル線が廃線となり、すべての計画が頓挫した中学生の有賀海幸(ありが みさち)。途方に暮れていたところをリガヤという少女と出会う。
リガヤは「ボクがこいつを幽霊鉄道として蘇らせる」といい、海幸に死を与えることを約束するのです。
あの伝説の富士見ミステリー文庫が復刊しましたよ!!! 人気すぎてプレミア価格ついててビビり上がった。読みたかった本なのでとても嬉しい。
今初めて読んだ筆者の感想は「あっいいねこれ」くらいの温度感なのですが、これが16年前の作品なんですよ。
で、16年前の百合文芸を考えると、マリみて・砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けないくらいしかない時代ですよ。(多分もっと他にもいっぱいあると思うけど筆者が知りません。勉強不足を感じます。)
その時代にこの作品が出て、読んでしまった百合オタクは「そりゃ狂うだろ」と妙な納得がありました。
そんな作品なので当然いい作品というわけなんですよ。文体と空気感がゼロ年代ラノベのそれなんですけど、あの時代独特のミステリアスな雰囲気と、どこか堅苦しくあろうとする文体が好きでしたね。
百合史上的にもかなり大事な一冊なので必読だと思います。

成瀬は天下を取りに行く

成瀬は天下を取りに行く 表紙画像

「島崎。わたしははこの夏を西部に捧げようと思う」この一文から始まるエキサイティングな小説。主人公の成瀬は、いわゆるなんでもできる天才肌なのですが、その発揮する方向が少し変わっているのです。「シャボンのプロになる」といい、シャボン玉を極めてローカルテレビに出演したりとか、そういうちょっと変わった子なのです。この本はその主人公である成瀬を中心に、成瀬の地元である膳所滋賀県の大津を中心に描かれています。
実際に2020年8月31日に西武大津店が閉店となったことをきっかけに書かれた作品なのですが、この作品が女による女のためのR-18文学賞の大賞・読者賞・友近賞の三冠を獲った史上初の作品です。
読み進めていくと、成瀬の武勇伝がどんどん描かれていてとてもおもしろいのですが、とにかく最後の「ときめき江州音頭」がいいんです。成瀬の幼馴染である島崎のある一言で、日々狂いのない生活をしていた成瀬の生活が崩壊していくのです。ここの過程がめっちゃいいんですよ……。百合的にはそこだけで、残り4編には男が出てきたりもします。
ですが、エンタメ小説として読んでいくともうとにかく面白くて、2024年の1月には続編がでます。
ぜひ成瀬ワールドを読んでみてください。

懺悔編

光のとこにいてね

光のとこにいてね 表紙画像

去年買ってたのに去年読まなかった懺悔本コーナーです。2023年に享受した百合で一番刺さったので紹介させてください。
裕福な家庭で育った結珠と、古い団地に住んでいる果遠。二人が出会ったきっかけは、結珠が母に連れられた古い団地だった。結珠は母に言われて団地の下で待っていると、結珠の姿を見かけた果遠は声をかけに行きます。住むところ・食べるもの・服、全てが正反対の二人ですが、ふたりとも初めて親友と言えるような関係になりました。ある日、いつものように母に団地に連れられた結珠は果遠と遊んでいました。果遠は「あそこの、光のとこにいてね」といい、結珠をまたせます。しかし、果遠と遊んでいるところを見つけた結珠の母は結珠を叱りあげ、無理やり家に連れ返すのでした。別れてしまった二人ですが、お互いのことを忘れるわけものなく、話は未来へと続くのでした。
ここまで読んでいる文字読みの方なら、きっと宮木あや子先生の「あまいゆびさき」を読んでいると思います。あまいゆびさきが好きな人は今すぐこれを読んでください。刺さります。
幼少期からを描いて、キャラの心に一生忘れないキャラを作り上げて話を進めていく作品って本当に好きなんですよね。とにかく伏線もめっちゃ張られているし、読み進めていけばいくほど、この2人が過去に縛られながら今を生きているかが本当にわかります。
結末で泣いて、結末の結末で大泣きできる素晴らしい百合作品です。私の生涯百合小説ランキングが揺れ動きました。
あとこれが本屋大賞3位ってマジ?????

余談ですがこれがイメソンだと思っていますので、読了後の方いらしたらぜひ見てください。

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後記

百合漫画の情報収集不足を感じた1年でしたね。
ちゃんと本を読んでなくてごめんなさい。来年はちゃんと本を読みます(これ毎年言ってない……?)