百合とメガネと大体駄文

ブログ名のとおりです

このレズセックスがすごい!2020(下半期)

ごきげんよう。仮性レズです。

今年もこの季節がきましたわね……

2020

今年は上半期と下半期に分けてみましたの。
「この作品が無いじゃねえかボケェ!!」って意見の前に上半期版をお読みくださいまし。

 

dst0m.hateblo.jp

 

ネタバレありのブログなので下記作品のネタバレを食らって嫌悪感を抱きたくない人は一読してからもう一度いらっしゃいな。

 

7~12月を振り返る

私も書店業界の端くれから離れてしまって数ヶ月、本当に業界の流行が一切感じなくなりましたわ。今まで肌感覚で分かってらした漫画の売れ行きが売り場から察するしかできなくなった苦しみ、ヨシ子さんなら分かってくださいます?

 

安達としまむら、アニメ放映

こ゛の゛せ゛〜゛〜゛〜゛か゛い゛で゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛君゛に゛会゛え゛た゛日゛か゛ら゛輝゛き゛は゛〜゛〜゛〜゛〜゛じ゛め゛て゛る゛

いや、皆さん何年待ちましたよ。あの安達としまむらがアニメ化ですよ?
自分が安達としまむらのアニメ見てる人全員が「はやく5巻の激重テレフォンをやれ」と叫びちらしていて、パンクロックを聞く赤べこの如く頭を振り回してます。
個人的には11話くらいでAパートを安達目線、Bパートをしまむら目線でやって、Cパートで*****って言って***を切る****を見たすぎる。OVAでもいいからやってくれ。

 

朗読劇「やがて君になる 佐伯沙弥香について」公演

この記事読んでる人の120%が「やがて君になる」を見てると思うのですが、舞台「やがて君になる」の代理公演として行われた朗読劇。
いや、このご時世とはいえ、ささつの朗読劇やるってマジなの?正気?って5回は思いつつもチケットを握った。そしてチケットの金額でマジなの?ってなった。マジなのかカウンターが2くらい増えた。

とはいえ、本ッッッッッッッ当に最高の朗読劇でした。マジで。本当に。

会場に貼られまくってる佐伯沙弥香のポスターで過呼吸気味になり、人生で一番緊張した高専受験以来のバカでかい緊張を抱えて上演を待ち、リズ以来に作品に集中しすぎて呼吸を忘れる感覚を体験しました。

浴びた感情と作品の繊細さに耐えきれなくなり10分くらいは歩くのが精一杯でした。

大場なながスタァライトスタァライトに執着する気持ちがちょっと分かった。
はやく千穐楽の円盤が届くのが楽しみです。

余談ですけどグッズが全部受注生産で、その中にマスクとハンドジェルあるの本当に面白くないですか?なんで作った?おまけに受注生産ですよ?なんで?

さらに余談ですが、朗読劇へのウォーミングアップとしてささつ1,2巻を読み、朗読劇後にささつ3巻を読んだら佐伯沙弥香が報われすぎてて呼称一つで大泣きしてしまいました。BIGマジで。

 

定時にあがれたら、完結────

近年まれに見る社会人百合ブームの中、絵柄の可愛さと丁寧に恋愛を1から始めていく初々しさマシマシの激推し百合作品。犬井あゆ先生作の「定時にあがれたら」がついに完結してしまいました……。
この作品本当に1つの出来事に対して主人公がどう思うかの心理描写の造形が深くて素晴らしいんですよ。そんな素晴らしい作品がまたこの世から幕を下ろしてしまいました……。

 

マジで作品の演劇情報と完結情報書くくらいしか知識がない。とてもつらいね。

前置きはこのくらいにしておいて、本編いきましょう

 

選定基準

・2020年7月1日~2020年12月31日までに書籍化した漫画(連載が2020年7月以前かどうかは問わない)

・シリーズ物2巻以降は除く

・同人作品は除く

・面白かったので読んでほしい作品

 

コミック部門

カノジョと秘密の恋もよう

 

SNSでバズった系の漫画ってあんまり好きじゃないんですけど(斜に構えオタク)ヘラヘラしながら買ったらめっちゃ良かったです。

タイトル通り、主人公の2人が小さい異能力を使える者同士の話です。片方は「思ったことが現実になる能力」、もう片方は「時々相手の心の声が聞こえる」というものです。二人とも能力のことをお互いに話しているわけでもなく、秘密にしているわけです。

お互いにいい彼女になろうと接してる姿勢がとても良く、「はなにあらし」のスタイルを踏襲した作品だと思います。

これは推しポイントなのですが、主人公の女の子が彼女へのプレゼント見繕ってたら店員に「彼氏さんに喜んでもらえるといいですね」と言われた時の切り返しが愛想笑いしてさり際に「彼女さんです」とハッキリ言って立ち去るシーンが本当に良い。

ここ1年位のポップ系な作品だけども展開と表現がなかなか良くてサクサク読めるのでおすすめです。

カノジョと秘密と恋もよう(1) (4コマKINGSぱれっとコミックス)
 

 

合格のための!やさしい三角関係入門

どうも、百合大学 巨大感情学部 三角関係学科 バカでかい片想い専攻 Ph.Dです。
タイトルからして弊専攻研究室で取り上げなければならない作品ですね。

この作品では次の登場人物が現れます。
真幸:憧れの先輩である、あきらが通う高校を受験する中学3年生
あきら:真幸とは中学時代のバスケ部の後輩の関係。凛とは同級生
凛:真幸の家庭教師をする。

真幸は憧れているあきらとの高校生活を実現するために家庭教師として凛から勉強を教わります。その際「自分にはあこがれの人がいるからその人と対等になれるように」凛とデートやキスの練習を迫ります。
家庭教師としてせがまれているので、その練習役になる凛ですが自身も恋愛経験が乏しく、不安になりながらも相手をします。そのことを友人であるあきらと共有している形になります。
そしてここが一番の衝突点あきらは実は凛のことが好きで、その好意を隠しています。

ここまでを図に起こすと次の図1となります。

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図1. 合格のための!やさしい三角関係入門の関係図

単行本1巻の内容ですと、このような図になります。ここで注目したいのが、今まで私が提唱していた「百合の性癖がバレる三角関係図(図2)」と対比すると、お互いに好きという関係がまだ現れないところが特徴かと思います。

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図2. 百合の性癖がバレる三角関係図

私の予想としては、ほとんどの百合の三角関係はこの図2の人間関係に落ち着くというものがあります。この作品の今後の展開で図1の関係が図2になり、参考例となる人間関係作品が増えることを願っています。

ちなみにですが、あきらがジュース飲んでるシーンに高確率で凛が真幸とのことを話していまして、高確率でストローが噛み潰されている描写があります。嫉妬を感じられて大変良いと思います。

 

合格のための! やさしい三角関係入門(1) (電撃コミックスNEXT)

合格のための! やさしい三角関係入門(1) (電撃コミックスNEXT)

  • 作者:缶乃
  • 発売日: 2020/08/27
  • メディア: コミック
 

 

ゆりづくしの教室で

 さて、突然ですが、皆さんは百合作品と言われるとどのようなものを思い浮かべるでしょうか。リズと青い鳥青い花、ルミナス=ブルー、やがて君になる等々様々です。
これらの作品は主に2〜4人の人間関係に注視し、作品を描かれているかと思います。つまり、下駄箱で友人にタックルするお団子ちゃんや、主人公の夢を否定するようなカメラマン、本性がわからなすぎる解釈違いの百合厨などのサブキャラやモブが存在するわけです。

しかし、この作品は全員が主人公なのです。誰もモブなんていません。クラスにいる30人全員が主人公です。

女子校のクラスのキャラクターたちがわちゃわちゃと雑談したり授業受けたりとかしてる光景を只々読む漫画です。毎話毎話クラスの中から2人が選ばれ、その2人にフォーカスを当てて話が進むスーパー百合オムニバス作品です。
「あの娘にキスと白百合を」とかが好きだった人は絶対に好きになれるやつ。

この作品、まだ1巻しか出ていないのにクラス30人分の設定を考えられていたり、作品の片隅で展開されている他のキャラ達の会話が別の話の伏線として生きてたりと、作品の作り込み方が半端じゃないです。
王道の百合カップリングから、マイナーな百合カップリングまで全部揃ってるカップリングデパート作品です。何卒よろしくお願いします。

 

ゆりづくしの教室で(1) (百合姫コミックス)

ゆりづくしの教室で(1) (百合姫コミックス)

  • 作者:しーめ
  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: コミック
 

 

ふたごわずらい

 双子姉妹のゆがんだ想いの話です。双子姉妹のゆがんだ想いの話ですよ!?!?!?
つまり双子姉妹のゆがんだ想いの話ってやつです。

双子姉妹百合とゆがんだ想いが性癖なのでこれはもう最高の作品ですね。

双子の姉、アコと妹のこまちのお話です。アコはある日英語教師と補習を受けることに。そこでアコは英語教師に告白します。しかし、こまちはその現場を目撃してしまいます。進展していくアコと教師の関係、バラバラになっていく双子の関係、そして双子の幼馴染の仲とは……

双子姉妹は妹の感情がデカイのが通説ですから、些細な所作にこまちの姉への愛のデカさが開幕からぶちかましてて最高ですね。

ただ2つほど大きな問題がありまして、百合姫2月号で完結しちゃった上に来年の2月に2巻が出て終わるそうです。作者から「元々10話構成でした!」って発言があったので打ち切りでは無いようですが、作者にこういうこと言わせる一迅社ってお前……

もう1つはめっちゃ好きな題材なのに自分が双子姉妹百合を拗らせすぎてあまりハマれなかったところです。性癖矯正していきたいと思います。数少ない双子姉妹百合だから読んでおくんなまし……

 

ふたごわずらい(1) (百合姫コミックス)

ふたごわずらい(1) (百合姫コミックス)

 

 

 突然何となく隣の席の同僚とキスしたくなりました。

 昨年、大洋図書というBLを専門とする出版社からひねり出された百合レーベルことLily Love。そこの作品である「突然何となく隣の席の同僚とキスしたくなりました」がなんと書籍化しました!!やったー!!!BLに本当に真剣だった大洋図書から百合レーベルが出てくるの本当に嬉しすぎるんですよね……。

表題作の「突然何となく隣の席の同僚とセックスしたくなりました」は開幕1セリフ目から「あ〜〜〜セックスしたい!!」とセンシティブすぎる発言をブチかまし、そのまま意気投合した隣の席の同僚とセックスします。そこから繋がるのは体だけの関係かと思ったら精神的な関係までつながっていくいい作品です。

個人的にはベッドルームテレパシーという作品が大変いい作品だと思います。
いわゆる女子校の王子みたいなキャラと主人公が付き合う話です。主人公が女子校の王子とはいえど女子というところをしっかり把握していて、かなり二人の間の精神的なつながりを見せてくれ、女子校の王子は王子だけどちゃんとした女の子と肯定しているところが好きです。

基本は学生から社会人ものの百合作品が詰まっている作品集、全作品を通して2011〜2013年頃の尊いがベースだったポップなストーリーラインに、女性らしさのフィジカルな描写を挟むものが多い良い作品。

姉の友人

 なんとリイド社という出版社からも今年は百合漫画が出ました。結構年齢層が高いレーベルな印象がありましたけど、こんなところからも出るのかと驚きです。

姉の友人というタイトル通り、主人公の姉であるナッちゃんの友人に当たる今日子の話です。今日子は失恋をきっかけにナッちゃんと出会います。二人は仲良くなっていくのですが、ナッちゃんが一目惚れしてかった香水やコスメ、アクセサリーはナッちゃんがつけると似合わず、今日子がつけるとすごい似合うという謎のセンスを発動します。
これをきっかけに、自分が欲しいものは全部今日子が持っているというコンプレックスを抱き始めます。ある日、ナッちゃんは今日子に特技はダーツを披露します。絶対に真ん中を捉えることができると豪語するので、今日子は「もし真ん中に当てたらナッちゃんのものになる」と告白をしますが、ナッちゃんは外してしまいます。ここから今日子とナッちゃんの関係がどんどん崩れていき、最終的にナッちゃんは男の人と結婚してしまうという、今日子視点からすると悲恋なお話です。

ダーツで今日子を自分のものにできなかったあたりからの今日子に対するナッちゃんの想いや、ナッちゃんの婚約者と今日子が会ってしまうときの会話の表現が本当に良い。割とメリバ系の終わり方ですが、心にくる何かがあると思います。

姉の友人 (torch comics)

姉の友人 (torch comics)

  • 作者:ばったん
  • 発売日: 2020/06/12
  • メディア: コミック
 

着物ちゃんとロリータちゃん

 まんだらけで広告見かけて「これは百合だろ!!!おい!!!」と久々に直感が百合と告げた作品です。ていうかまんだらけって出版業もやってたんですね。知らんかった。
趣味が着物だったギャルと、趣味がロリータだったギャルが出会ってしまう話です。お互いに「意外じゃん!!」とテンションが上がって二人とも合わせて写真取りたいね〜という話になります。お互いに来てる服のジャンルが全然違うのに小物でお互いに寄せていくスタイル、マジで最高じゃないですか?
ただ、お互いに学校じゃギャルなので基本放課後とか休日に遊びに行くタイプです。隠れて付き合う系の作品、最近の流行なんですかね?

服を題材にしているだけあって、アクセサリーとか小物の描写がすごいので読んでみてね。

 

着物ちゃんとロリータちゃん 1巻 (LAZA COMICS)
 

 

声が出せない少女は「彼女が優しすぎる」と思っている

 SNSでバズったやつ第2弾です。これも思ったより良かった。

タイトルの通り声が出せない少女がやたらと絡んでくるヤンキーみたいなのに「めっちゃ優しすぎない?」って思うやつです。
でもこのヤンキーただのヤンキーじゃなくて心が読めるタイプのヤンキーです。めっちゃ気配れるヤンキーです。

毎話毎話ヤンキーが少女に対してすんごい気を配って仲良くなっていく話で、ヤンキーが少女をひたすら肯定していく姿勢が只々いいなと思える作品です。
Web連載ベース(だった気がする)のでサクサク読める感じですし、ちまちま読むも一気読みするも自由に行ける作品です。

 

ふたりエスケープ

 漫画家と無職が只々現実逃避するだけの話です。
大体女と女が酒を飲んでるだけな漫画な気がします。酒の勢いで旅程を生やしたり、すべてを放り投げて酒飲んだり、インターネットから遮断してみたりと現実逃避に徹する漫画です。

百合的な火力は今の所低い気がしますが、ストーリーのテンポの良さとギャグに徹するセンスはかなり強いと思います。ゲラゲラ笑って現実逃避したいときに読むといいかと思います。社会人労働派に効く漫画です。

こうして当たり前のように毎話酒ばっか飲んでる作品が連載するあたり、百合姫の年齢層も上がってきたのかなという邪推が止まりません。でもしょうがねえだろ酒飲んでないとやってらんねえんだからよ。 

ふたりエスケープ(1) (百合姫コミックス)

ふたりエスケープ(1) (百合姫コミックス)

  • 作者:田口 囁一
  • 発売日: 2020/11/18
  • メディア: コミック
 

ファインダー越しのあの子 

 以前からリーリエコミック電子版の連載を担ってた作品、ファインダー越しのあの子が上下巻セットで発売しました。自分は圧倒的紙派かつ、単話売りが苦手なので非常に助かります……。

女子高生が夏の思い出に映画を撮り始める話です。主人公のはじめは自分の想いを打ち明けられず、高2の夏を迎えます。もう映画同好会と言っていいくらい視聴専門の映画部の廃部も近づく仲、市ノ瀬慧というクラスメイトに出会います。彼女と出会ったことをきっかけに映画を作ることをはじめは決心します。それを後押ししてくれる幼馴染の穂波が色んな人に声をかけ、映画製作に取り掛かります。

ここまであらすじをザーッと読むと青春の思い出に映画を作るだけのはなしかと思ったら、主人公のはじめは市ノ瀬慧に告白されるし、主人公の幼馴染である穂波は「はじめの一番でいたい」「頼られる私でいたい」「私を置いていかないで」などと、虹ヶ咲11話並の最大瞬間風速ワードをガンガン投げ込んでくるとんでもねえ奴です。

そして何より演出手法が次の時代の百合という感じがしましたね。明示的な恋愛関係を持ち込まず、比較的やんわりと各々が他のキャラ達にどのような感情を抱いているかを描き、少女の青春を描いて読み手に解釈を任せる塩梅がとても良かったです。ぜひ、夏に読んで夏にまた一つ囚われる作品になってほしい。 

ファインダー越しのあの子➀ (Lilie comics)

ファインダー越しのあの子➀ (Lilie comics)

  • 作者:カボちゃ
  • 発売日: 2020/08/21
  • メディア: コミック
 
ファインダー越しのあの子2 (Lilie comics)

ファインダー越しのあの子2 (Lilie comics)

  • 作者:カボちゃ
  • 発売日: 2020/08/21
  • メディア: コミック
 

 

夢の端々

 真打。あっぱれ。

須藤佑実先生といえば、GOTから出ているgirls×gardenコミックスシリーズで連載持ってたり単行本を持ってたりする人ですね。包帯少女期間という単行本、本当に良いので興味を持った方はぜひ。

さて本題へ戻りましょう。伊藤貴代子と園田ミツは70年前に心中を図った女学校の先輩と後輩の関係にあたります。結局心中自体は失敗しますが、その後も恋愛関係は続きました。しかし、貴代子は28のときに見合い結婚をしてしまいます。ミツは婚前最後の旅行で貴代子を説得しますが、それも失敗に終わってしまい二人は生涯を友人として終えてしまいます。

まず、この作品は本という媒体に対しての1つの訴えを感じます。本はページを捲る度に時系列が進むものですが、この作品は2018年、1988年、1969年、1961年、1957年、1949年、1948年と時系列が大きく戻って進んでいくという構成になっています。

こうして彼女らの関係をさかのぼりしていくことで現れる感情の変化や、読み返すことで発見できる新たな想いなどが出てきて完成度が高い本となっています。

そしてストーリーですが、局所局所で彼女たちの人生というステージが進んでいき、結婚した貴代子は結婚生活をベースとした話になり、ミツはミツで独身人生を歩んでいく過程が描かれています。それを逆行して読んでいって女学生時代に起こした心中未遂事件まで戻るんですよ!?!!??おっかね〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!

本当に完成度が高い作品ですし、各時代を遡りつつもちゃんとその時代背景や言葉使いをしっかり使っていて作品の本気度が伺えるものです。

これ、2020年下半期で一番の作品かもしれん。読んでくれ。

余談ですが、表紙の装丁と帯の使い方が才能の塊なので紙で読んで欲しい。インクの匂いめっちゃしておすすめ(これは多分ちがう) 

夢の端々 上 (フィールコミックス)

夢の端々 上 (フィールコミックス)

  • 作者:須藤佑実
  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: コミック
 

 

 

夢の端々 下 (フィールコミックス)

夢の端々 下 (フィールコミックス)

  • 作者:須藤佑実
  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: コミック
 

 

文芸部門

今年の百合文芸というか百合ライトノベルは全部みかみてれん先生が持っていったなと思いました。そもそもみかみてれん先生の刊行作品数がかなりありますし、それもほとんどがちゃんとシリーズ化したりコミカライズしたりと、ライトノベル界だけでなく漫画界にも大きな影響を与えていると思います。

これは個人的な意見なのですが、今年読んだライトノベルはほとんど刺さるものがなく、時代に取り残された感性を持ったおじさんと化したのではないか。という不安がすごかったです。どれもこれも、なろう系のインスタントストーリーみたいなものが多く、情景や背景描写よりもセリフ単騎戦みたいなのばっかりを掴んでしまった感じがします。その中でも数冊いいものはあったので紹介していこうと思います。

やっぱりライトノベルって買うもんじゃねえなと思いました。

このぬくもりを君と呼ぶんだ

 まず表紙がいい。仲谷鳰先生やぞ。

今流行のSF百合です。地上の環境破壊が進みまくった結果、人類は地下帝国を気づいて生活を始めます。もちろん地下の国なので太陽なんてものはなく、ディスプレイで覆われた人工照明になっています。食料なんかもどんどん人工食料に置き換わり、人工肉などを食すことが一般的になっている世界です。
人工の空や人工の食料を「フェイク」と揶揄し、世界に苛立ちを抱える少女レニーはサボり魔の不良少女のトーカと出会い、フェイクでない世界を探す遊びを始めます。
ある日、レニーは空から降ってきた真っ赤に燃える隕石のようなものを「太陽の欠片」と名付けて手にします。この欠片を触れることでレニーはやけどを負いますが「この痛みこそがフェイクじゃないリアルなんだ」と生傷を増やす日々を過ごします。
しかし、その異変に気づいたトーカはレニーを止めますがレニーは言うことを聞かず、レニーとトーカは対立してしまいます。
対立してしまったレニーの末路とは、そしてレニーに対するトーカの想いとは──

この作品、普通に昨今の流行を踏んだSF百合としてもまぁ面白くていい作品なんですけど、個人的に良かったのが表現方法です。
百合漫画は基本的に三人称視点で物語を俯瞰するので、AからBへの感情とBからAの感情を同時に描くことが一般的です。(群像劇とかいうらしい。しらんけど)
一方、文芸作品は誰かの視点で話を進むことが一般的です。したがってAからBへの感情はしっかり読み取ることができていても、逆がそうでもなかったりします。
ライトノベルだしどうせそんなに丁寧な感情の描き方してないやろとヘラヘラしてたら普通に群像劇形式で作品を展開していて個人的にはとても良かったです。

百合漫画育ち百合文芸憧れ系の人は読んだほうがいいです。

このぬくもりを君と呼ぶんだ (ガガガ文庫)

このぬくもりを君と呼ぶんだ (ガガガ文庫)

 

 

愛されなくても別に

 私はこれを「百合!!!」と叫ぶことはできないんですけど、非常に面白い作品でした。武田綾乃が書く主人公との家族関係という激重いテーマで始まる作品です。
母子家庭で育っている宮田は大学の学費も稼ぎつつ、家に8万円入れるために宮田が、父親が人殺しと言われている江永と同居する話です。
宮田は学費も家に入れるお金も稼ぎつつ、家事をすることが当たり前の生活を送ってきました。そのことを聞いた宮田のバイト先の人が色々と苦言しますが、よそはよそ、うちはうちという精神で聞き流します。
しかし、ひょんなことから知り合って仲良くなった江永に家の事情を話すと具体的なアドバイスなどを言われてしまいます。半信半疑ながらも江永のアドバイスに従うと、自分が家に入れてきたお金や奨学金を母親が横領していたことを知ります。
自分は歪んでいる家庭に住んでいることを自認しつつも、これが親との愛と思っていたものが音を立てて崩れ、宮田は家を出て江永の家に転がり込みます。
こうして同居生活をしながら家族観を考えていく作品です。

とにかくこの作品のテーマは「家族観の正しさ」だと思います。宮田も歪んでいると自認しているが、それが普通と思って過ごしてしまうんですよね。特にこういう家族だとか家庭の話って他人にすることが基本的にないですし、育った環境にかなり依存するのである種の宗教を感じてしまいます。それを複数人の家族観を見ることで、宮田の家族観にメス入れているところが良かったです。

自分も家族との関係を考え直すいいきっかけになりました。ありがとうございました。

愛されなくても別に

愛されなくても別に

 

 

番外編

ポラリティ透明期

 これも「百合!!!!」と叫ぶにはなにかの障壁を感じるけど面白い作品でした。
同性愛を禁じられた世界でこっそりと付き合うしおんと不由美ですが、ハグやキスなどの同性愛行為を認められたと言われて強制収容所みたいなところに閉じ込められます。
閉じ込められた先では異性とペアを組み、共同生活を行いながら洗脳に近い教育を受けます。その環境下でもしおんに会わせろと暴れ散らかし、拷問部屋みたいなところに不由美は連れて行かれます。そのメッセージを汲み取ったのか、教官たちをたぶらかしてしおんは不由美に会いに行きます。

とにかくこの作品はマイブロークン・マリコに近いゴリゴリ感情を絵に載せて放ってくるタイプの漫画です。異性愛に矯正するという世界で同性愛を見ていくのでヘテロの圧力がすごくて百合と断言するのがかなりしんどい作品ではありますが、かなり引き込まれるすごい作品です。よかったら読んでください……。私もこれ書いてて2巻出たことを知ったので2巻買ってきます……。

 

まとめ

2020年下半期の漫画、いい作品はある程度見つけられたような気がしますが、「書籍化」というレギュのおかげでロンダしてる作品も取り上げちゃいました。
とはいえ、ここ最近おもしろい百合の新作を見つけてくるアンテナが死にかけている気がするんですよね。来年こそいい百合を見つけれるように精進したいです。

とりあえず覚えて帰ってくれリスト

・ゆりづくしの教室で
・ファインダー越しのあの子
・夢の端々
・姉の友人

百合納めにでも活用してくださいな。

それではまた。ごきげんよう