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リズと青い鳥レポート

はじめに

 この記事を書くに当たり、トータル12時間以上に及んだ談義を繰り広げ、私の素人目線による無理矢理なこじつけに賛同し、鑑賞しながらメモを取ってくれたY氏に感謝する。

 このレポートは思考のログでもあり、ネタバレでもある。

 また、数多とあるリズと青い鳥に対しての解答の一つとして受け入れてもらいたい。

 そして長い。

 

目的

 最近、百合厨が「これは百合だ!!」と叫び散らかし、中には頭が狂ったのか「リズと青い鳥を見てください」「味ついてて美味しいです」「傘木お前そういうところやぞ」等しか言えなくなった人間を見かける。一体人々をここまで魅了し、最終的には勝手に妄想して勝手にキャラクターに回りくどい愛の伝え方をしてもらって「お前!!!」とブチ切れるなどの終末を送らせる「リズと青い鳥」という映画が一体どういうものなのかを考える。

 

方法

 映画館へ行き、リズと青い鳥を見る。また、このレポートを書くに当たり、私は5回、Y氏は3回ほど見た。

 

結果

 リズと青い鳥は芸術として受け取り手がどう考えるかという要素を残しつつ、受動的に見る映画としても質の高い映画ということがわかった。また、芸術として受け取り、私とY氏による考察は次の考察にまとめることにする。

 

考察

作中のリズと青い鳥と希美とみぞれの関係について

 私はリズと青い鳥を初めて見た際「この映画は背理法が成り立っている作品」と感じた。

 受動的に見ていると、作中に出てくるリズと青い鳥はリズ=みぞれ、少女=希美という等式が成り立って話が進んでいく。だが、その等式を成立させたまま話を進行していくと、希美とみぞれの間柄はどんどん悪くなる一方である。

 しかし、新山先生の助言と希美自身が当てはめの違いに気づいた点から、実はリズ=みぞれ、少女=希美が正しいとなった仮説が出た。その結果、青い鳥と籠から飛ばせないと言っていたみぞれは「青い鳥はリズのことが大好きで、リズの幸せを願う結果、リズが提示した大空へと羽ばたく条件を飲むしかなくなる」という結論にたどり着く。そして、自らが青い鳥を表現することがオーボエのソロであると理解したみぞれは、感情を込めに込めたオーボエのソロを演奏することが出来たと考える。

 このような仮説として立てた前提条件では論理が成立せず、仮説の否定を用いることで話はまとまるので背理法といえるであろう。(ここでリズ≠みぞれ、少女≠希美を否定と呼べるかは諸説あるが)

 ここで気になったのは、一体何がどう作用して最初にリズ=みぞれ、少女=という等式が成立したかである。次にこの点について紐解いていこう。

リズ=希美、少女(青い鳥)=みぞれのアンカリング

 ここではリズ=みぞれ、少女(青い鳥)=希美という等式が成り立つことの裏付けが起きていることをアンカリングと呼ぶことにする。

 私はこのアンカリングが起きてる点を6つほど感じた。それを次に示す。

 1つ目のアンカリングは、希美が図書館から本を借りてきて、みぞれと読むところで起きていると考える。リズっていう一人ぼっちの少女のお話という希美のセリフと共に、映像では、希美と思われる女子が別の女の子に自己紹介して、吹奏楽部に誘うシーンがある。ここで早速1つ目のアンカリングができている。

 2つ目のアンカリングは、練習後に剣崎梨々花がみぞれと話す時に起きていると考える。フルートパートを指しながら「あそこのパートいつも楽しそうですね、まるで小鳥たちのさえずりのよう…なんちゃって」という剣崎のセリフ。ここでフルートパート=希美、フルートパート=小鳥たちのさえずり、の2つの式より、若干苦しいが希美=小鳥たちのさえずりの≒小鳥という解釈ができる。よってこれを2つ目のアンカリングとする。

 3つ目のアンカリングは、希美がくれた青い羽をみぞれが手に包みこみ、大事そうにするシーンであると考える。これと同じ仕草は、作中のリズと青い鳥でも行われ、リズが青い鳥(少女)の羽を手に取り、手に包み込むシーンがある。よってこれを3つ目のアンカリングとする。

 4つ目のアンカリングは、作中のリズと青い鳥回想シーンで、リズと少女が一緒にピクニックをする場面である。ここではリズが「あなたはどうしてここに来たの?」と少女に問いかける。すると少女は「リズが一人ぼっちだったから」と答える。ここで中学時代に一人ぼっちだったみぞれに話しかけた希美の存在があるので、ここを4つ目のアンカリングとする。

 5つ目のアンカリングは、生物室でフグを見ている際、希美がフルートの反射光でみぞれを愛撫するシーンである。生物室で堂々といちゃつかないでほしい。あのシーンでは、希美がみぞれに対して満面の笑みで手を振り、最後にはみぞれを手銃で撃ちぬく。みぞれはふにゃ〜っと笑った後、希美を見るが、そこには希美はいない。これリズ(みぞれ)が目を離すと少女(希美)がいなくなる、すなわち毎晩少女が夜空を羽ばたいていくシーンと繋がるであろう。

 6つ目のアンカリングは、みぞれがフグにご飯をあげた後、希美が「何してたの?」と尋ねるシーンである。ここはみぞれが「フグにご飯あげてた」と言った後、希美が「リズみたい」といい、みぞれはその返答に頷く。よってこのシーンで6つ目のアンカリングとする。

 ……いかがだったろうか。割りとこじつけに近い箇所は多いと思うが、納得できる内容ではあると考える。しかし、これは全て論理が成立しない部分の裏付けであるので、ここまで読んでいただいた人には大変申し訳無いが、じつは全てミスリードとなるのである。

 では、逆にリズ=希美、少女(青い鳥)=みぞれは一体どこから成立するのか。これについては次に言及することにする。

リズ=希美、少女(青い鳥)=みぞれのアンカリング

 前回のミスリードをアンカリングと呼ぶのであれば、これを新アンカリングを呼ぶことにしよう。

 ではこの新アンカリングどれくらい行われていたのかを記述していこう。

 1つ目の新アンカリングは実は、作中のリズと青い鳥の中の冒頭の動物たちに餌をあげるところから起こっている。おそらく中学時代から友達も多く、孤立していない希美は、周りの友人に囲まれているであろう。ここで、希美の友達=動物たちとおくと、リズは動物たちに囲まれている中、青い鳥(みぞれ)の存在に気づく。そして青い鳥をみかけるようになる。やや苦しいが1つ目の新アンカリングとさせていただこう。

 2つ目の新アンカリングは、少女とリズが出会い、リズが倒れていた少女を介抱したり、一緒に洗濯したり、パン屋に行くシーンであると考える。少女、即ちみぞれは、知らない世界をリズという希美が知らない世界に連れ回していると見られる。例えばパン屋に行った時、少女は「パンってこんなの沢山の種類があるのね」と言う。青い鳥は今までリズがくれるパンしか知らないので、こんな発言をするのも分かるであろう。

 3つ目の新アンカリングは、体育のバスケで本来は夏希と交代するはずだが、交代しないシーンである。少女にとってはリズが全てであり、リズがいないと人間らしい行動は何も出来ないのである。このシーンでは、コートの中には希美がいないので、みぞれはやらないという選択肢をとったのではないかと考える。

 4つ目の新アンカリングは、音大のパンフレットを貰ったシーンだと考える。希美は割りと軽い気持ちで音大受けると宣言したが、これをリズの選択として当てはめると、少女もリズの選択を受け入れることになる。よってみぞれが音大を受けると言ったのも納得がいく。

 5つ目の新アンカリングは、麗奈と久美子の2人でやるフルートとオーボエのソロの部分である。これを聞いた夏希は「強気なリズって感じだね。じゃあ、元気でなって」と言う。その後、優子が「高坂らしいわね」という。この文の繋がりを考えると、フルートパートを拭くトランペットをリズとして認めている。つまりフルートはリズであるので、希美=リズというアンカリングができるであろう

 このように5つの点において新アンカリングが起きてると考えた。また、リズと青い鳥をもう1度見直す機会があるのであれば、是非冒頭からリズ=希美、少女(青い鳥)=みぞれという等式を叩き込んで見てみるのも面白いであろう。意外と話が成立するのである。

剣崎梨々花というキャラクターについて

 ……疲れた。ここまで読んでくれている皆様ありがとうございます。現時点で3200字を超えています。本当にありがとう……。

 ここでは、剣崎梨々花と言うキャラクターについて考えましょう。

彼女、単なるオーボエの後輩と思いきや、サントラを聞いていると剣崎梨々花が出てくるときに流れるテーマ曲(剣崎襲来とか言われてるやつ)「doublelead,girs」が6パターンも入ってる。

わざわざテーマ曲を6パターンも作られている彼女。絶対に度外視できない存在である。

剣崎梨々花と言えば「コンビニのゆでたまごですー。味ついてて美味しいです」であろう。しかし、なぜ彼女は希美にゆでたまごを渡したのか。我々はその真相を知るため、再び劇場へと向かった──────

ここまでで、主要キャラである希美とみぞれは、既に話したように作中のリズと青い鳥の世界と密接な関係を持っている。新アンカリングを使うとリズは希美、少女はのぞみである。そして作中のリズと青い鳥では、少女は夜中に空へと羽ばたいていく。

リズは夜な夜な空を眺めながら、少女は空を飛んでいるのだろうと考えているであろう。

では、ここで少女が羽ばたいていく先である"空"は、吹奏楽部の誰になるのか。

私はこの疑問に対し、剣崎梨々花という答えがあるのではないかと考える。

希美がみぞれをプールに誘う際、あのみぞれから「他の子も誘っていい?」という言葉が出てくる。その時一瞬希美が見せる顔を私は見逃さなかった。

希美はみぞれだけを誘ったつもりであるが、ここで剣崎梨々花が出てくる。

希美=リズ=青い鳥を閉じ込めてしまう籠と考えると、希美はみぞれに他人の友好関係を持ってほしくないのである。しかし、みぞれは剣崎を友好関係を持ってしまい、希美の手から離れていく。

また、剣崎とみぞれはリードの作り方を見てもらう約束をし、剣崎とみぞれはリードがあっているのか確認するために一緒に合奏する。その時の、みぞれと剣崎の音色はどこまでも高く自由に飛ぶ鳥のようであり、そのシーンでは夏希と優子、みぞれと剣崎、希美がいる教室の順にトビが飛び回っている。

本来なら飛んでいる鳥が青い鳥であれば嬉しいのだが、演出的には青い鳥が飛んでいるよりも、トビが飛んでいる方が力強さと雄大さが表せると考えると、このトビは青い鳥の代役なのである。ここでみぞれである青い鳥(ここではトビ)が空を飛び回る様を考えると、空は剣崎梨々花なのかもしれない。

また、トビ繋がりでいくと、希美が「みぞれなんか私によそよそしくない?」と夏希に聞くシーン。ここでもトビが飛んでおり、この際にみぞれはついにダブルリードの会に参加すること決めるのだ。

ここで剣崎梨々花=空と仮定すると、かなり興味深いことが得られる。

冒頭、剣崎は希美に「最近鎧塚先輩とうまく言ってない気がするんですよ」と相談される。これを適当に返す希美をみていると、希美から見た剣崎は、希美とみぞれの2人だけの世界を邪魔する存在になる。

これをリズと青い鳥の世界に写すと、剣崎は少女と出会うきっかけとなる嵐なのである。

また、フルートパートの集いを盗み聞きし、剣崎が初めてみぞれを「みぞ先輩」って呼ぶシーンは雨の日に起こっている。

天候までの因果関係を考えると、もうわけが分からなくなってくるが、少なくともみぞ先輩と呼ぶことで剣崎とみぞれの距離は縮まったであろう。すると希美とみぞれの関係の中に剣崎がどうしても現れる。

最後に、剣崎を空とし、希美とみぞれの間=リズと青い鳥の間をグチャグチャにする嵐と考えると、剣崎から渡されるゆでたまご。あれはリズの世界である少女になるであろう。

これが私なりの剣崎梨々花とゆでたまごについての解釈である。

 味ついてて美味しいです。

最後に

 ここまでおおよそ5000文字です。お疲れ様でした。やっぱりリズと青い鳥という映画はここまで考察できる化け物映画なのかと思うし、まだまだ傘木お前そういうところやぞって絶叫し足りないし、大好きのハグについての考察とかも足りないところもありますが、それはまたいつか気が向いたり、誰かとリズ談義をした時にでも書きたいです。

 とりあえずここまでのこじつけに近い考察と長文を書きましたが、まだまだリズと青い鳥という作品を理解できたとは思ってませんし、この作品を完全に理解した暁には自分のことを剣崎梨々花と思い込んでいるゆでたまごにでもなっていると思います。

 早くリズと青い鳥絶叫鑑賞会がやりたいので円盤を発売してください……。