百合とメガネと大体駄文

ブログ名のとおりです

熊本行ってきた。

-序章-
ふと目が覚めた。少し脱水状態を感じた。
そういえば昨日の夜「3連勤も終わったし酒を飲もう」と思い酒を飲んだのを思い出した。
ある程度酔ってはいたが、23時にはベッドに入ったのは覚えている。
そんなことはどうでもいい。今一体何時だ。
ベッド横にある時計を見ると夜中の2時半を指していた。
……変な時間に目覚めてしまった。
二度寝する気力も起きなかったので、とりあえず椅子に座ってパソコンを開いて、ボーッとtwitterのタイムラインを眺める。
ふと隣の机に目をやると、昨日買った青春18きっぷが置いてある。
今度の旅行に使うけど、多分2日分は余る気がするんだよな。余らせるのは勿体無い。
そう思いながら私は切符を眺めた。
ここで私は閃いた。
どうせ今日休みなのだから、こいつを使ってどこかに行こう。
そして私は日帰り旅行の計画を立てたのだった。


日田彦山線 普通列車 添田
時刻表を見比べて計画が完成した。時計は朝の5時を指していた。
だが、7時には列車に乗らないといけない。
今から寝ると確実に昼に起きるので、列車の時間まで起きることにした。
漫画を読み潰しているとちょうどいい頃合いになったので、家を出て駅の近所のコンビニでコーヒーとパンを買った。
そしてこれから旅が始まるのだ。

青春18きっぷを駅員に渡して今日の印鑑を貰う。これで今日は1日JRには乗っていられる。
まずは日田彦山線という路線に乗る。
日田の山奥から小倉までディーゼルで走る路線だ。
本来は日田くらいまで行って欲しいところなのだが、2017年の7月にあった九州北部豪雨の影響で、添田から日田が終日見合わせとなっている。
一応振替輸送として、民間のバスが出ているらしい。
私は振替輸送が少し気になってこの路線を選んだ。
次の図は小倉駅から添田駅までの線路を塗った図だ。
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途中、田川後藤寺駅で15分くらい停車した。
今まで数回大回り乗車をする度に「やたらと線路だけはある田舎の駅」という認識だったので、駅の周りが気になったので途中下車した。
今回は18きっぷなので、何も気にせず途中下車出来るのが地味に嬉しい。
初めて駅舎を見たが、そんなに立派なものでもなく、そこそこな田舎の駅舎という感じだった。

しばらくすると再び添田行きが発車した。
列車はバリバリと音を上げ、ぐんぐん加速し、山奥へと走って行く。ところどころ田園風景を走る列車の車窓を見ながら、朝買ったパンをモシャモシャと食べる。

こうして列車に揺られること15分。終点の添田駅に着いた。
この辺りまで来ると駅舎という概念のない駅になってくる。
線路横に申し訳程度のコンクリートの足場があって、その上に降りる。ベンチまでは標準装備だが、運が良かったら屋根がある。
踏切も無いに等しく、線路を横断して駅を出るといった感じだ。
朝から1時間半くらい乗ったこの列車ともここでお別れだ。

日田彦山線 振替輸送 日田行
添田駅を降り、離れた駅舎を覗くと丁寧にバス乗り場への案内が書いてある。
私はその案内に従ってバス乗り場へ行くと、既にバスが止まっていた。
よくある大きな路線バスと思っていたが、実際は16人くらいが乗れるサイズのマイクロバスだった。
どうやらどこかの民間企業に委託しているようで、JRとは関係のない名前が書いてあるバスに、「JR代行バス」と貼っていた。
バスに乗るとおじさんが一人先に乗っていた。
私もバスに乗り込むと発車時間になったようで、バスは発車した。
運転手がマイクでアナウンスをする度に、まるで社内の慰安旅行の移動中にカラオケでもやるのだろうかと思うようなエコーがかった声が車内のスピーカーから聞こえる。

バスはどんどん線路沿いの道を進んで行く。
おそらくこのルートを走っていたはずだ。
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添田から振替輸送になっていたので、すぐ線路が駄目になっていると思ったが、添田の次の歓遊舎ひこさん、豊前桝田あたりまでは普通に線路は引いてあった。添田を過ぎると更に利用客が減る関係なのだろうか。
しかし車窓を見ていると、河川敷にやたらと重機が止まっている。おそらく治水工事か何かだろう。
景色を眺めていると、明らかにこの川の場所ではあり得ない直径50cmくらいはありそうなサイズの大きな石が川にゴロゴロと転がっていた。
他にも、川の護岸としてコンクリートで固めている部分が剥がれていたり、山の斜面は赤土で汚れていたりと、九州北部豪雨の凄まじさを感じた。
なかでも一番驚いたのは、川幅3mくらいのところにかかっていたコンクリートの橋が流されていたことだ。
人間が建てた建造物なんぞ自然の力によれば微々たるものと感じた。

河川沿いを走っていたバスはどんどん山奥へと行く。うねうねとした道をひたすら走る最中、スマホが圏外になって驚いた。
しばらくすると、東峰村役場についた。
村の役場前とあって、初めて人の乗り降りが起きた。
バスから降りるおじさん、勢い良く「おはようございます」と挨拶しながらバスに乗り込むおばさん達、彼らは日常的にこのバスをつかっているのだろうか。それとも田舎というコミュニティだからこのように挨拶をするのだろうか。私は少し気になった。

地元の人たちがそこそこ乗り込んだ頃、私の目的の夜明へとついた。
私はここで降り、日田へと向かって走りだすバスを見送った。

夜明
夜が明けると書いて夜明と読む。すごい駅名だ。
さて、ここで問題が起きた。乗り換えの列車まで1時間以上ある。
辺りは郵便局と道路以外何もなく、木々に囲まれた場所だ。
しかし、どうやら近くに温泉と神社があるらしい。
1時間以上待ちぼうけをくらうくらいなら行ってみようと思い、私はまず神社へ行った。

神社と言っても道の脇に鳥居があって、それをくぐるとすぐ本殿というこじんまりとした神社だった。
あたりを見回しても社務所も何もなく、鳥居の両脇に小さい小屋があった位だ。
私は神社の本殿と向かい合い、ここまで来たのも何かの縁だと思ってお賽銭を投げ、お参りをした。
お参りを済ませると神社でやることが無くなってしまったので、私は温泉へと足を運んだ。

神社から徒歩5分くらいだろうか。
大きな橋をわたってすぐのところに温泉はあった。
ちょうど開店時間に行ったので私以外の客はほとんど居なく、お風呂は貸し切り状態だった。
温泉へと浸かると温かくて少しぬめっとしたお湯が体を包む。
まだ旅を初めて3時間ほどしか経ってないので、疲労も溜まっていないが、体がリフレッシュされた気がした。
温泉から出て待合室を見回すと、冷蔵庫コーヒー牛乳が置いてあるではないか。おまけにこのご時世に瓶のコーヒー牛乳だ。
日本人なら誰もが一度は見たことのある「温泉あがりに瓶牛乳」という贅沢が出来るのだ。
こんなチャンスは少なく無いだろうと思い、コーヒー牛乳を購入して飲んだ。
朝から特に食べてなかったからか、体内にダイレクトにコーヒー牛乳が降りてくるのがわかる。そして口に広がるほのかな甘さとコーヒー牛乳の香り。ただでさえ美味しいコーヒー牛乳が、温泉の風呂あがりというシチュエーションがスパイスとなって美味しさを深くさせてくれる。

コーヒー牛乳を飲みながらゆっくりしていると、乗り継ぎの時間が迫ってきた。
私は温泉に別れを告げ、再び駅へと戻る。

夜明駅無人駅だ。おまけに利用者数も少ない。
私は駅舎で再び朝買ったパンをモシャモシャと食べる。
列車がそろそろくるんじゃないのか?とパンを加えたまま、駅舎のドアを開け、ホームに出ても誰にも見られてない。まるで家の中から「なんか外がうるさいな」という感じで窓を開ける感覚。アットホーム感がすごい。
パンを食べ終えてホームで列車を待っていると、ディーゼルの力強い音がどんどん近づいてきた。

久大本線  普通列車 久留米行
近づいてきた列車は、待っていた私を迎え入れるかのようにドアを開けて整理券を発券した。
18きっぷを持っているから、事実上整理券も要らないんじゃないのかと思いながらも、私は一応整理券を取る。
さて、これから久留米までの長旅だ。
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私は今までと同様に椅子に座ってぼーっと車窓を眺める。
代行バスで移動した添田から夜明までとは違い、線路も無事なうえに、河川も治水工事を行ってない。そして田んぼが多い気がする。
添田までは山の中を走っていたが、今度こそ田んぼばかりの田園風景を走る。
心地よい日差しと温泉上がりという状態、そして朝の2時半から起きていたので時々睡魔に襲われたが、無事に久留米へとついた。
久留米もかなり大きな駅だったが、ここにディーゼルの路線が止まるのを見ると不思議な光景だ。

この路線に乗っていて驚いたことがある。
なんとICカードが一部区間で使えるのだ。
一部区間とはいえ、ICカードで乗り降り出来るのは便利がいいので全国の駅に導入して欲しい。
とはいえ、駅をみると簡易型のICカードリーダーだったのだが。

旅はまだまだ続く。

鹿児島本線 快速列車 荒尾行
荒尾行。福岡都市圏に住んでいて、なおかつ鹿児島本線を日常的に使う人なら1度は聞いたことのある行き先だ。
まさか博多を通りすぎてもこの行き先を見るとは思ってもいなかった。おまけに久留米まで来ているのに。

乗り換えまで20分位あったので、途中下車して駅の周りを歩くと直径3mくらいはあるんじゃないかというくらいデカイタイヤが置いてあった。どうやら久留米はブリヂストンタイヤの本拠地らしくて、このタイヤが置いてあるそう。にしてもデカイ。

そして乗り換え、本日初めての"電車"に乗る。
朝からディーゼルで単線の汽車に乗っていたので、途中で80km/hくらいで対面から電車が来てすれ違う度に「すげえ!!」と思ったり、「車内アナウンスがはっきり聞こえる!!」と些細なことに感動していた。
途中、九州新幹線と並走したり離れたりをしたが、筑前船小屋という九州新幹線が通っている駅がとにかく大きくて驚いた。
失礼だが周りが田舎なあの駅に、一体何があるのか気になった。
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地図で言うとこれくらい移動したのだが、快速列車に乗っているので停車駅が少なく、あっという間に荒尾駅についてしまった。

鹿児島本線 普通列車 八代行
もう完全に行き先を聞いたことのない土地まで来てしまった。
八代とは一体どこなんだ。
そんな気持ちで私は荒尾駅にいる。
先ほども書いたが、荒尾駅は本当にめちゃくちゃ名前を聞くので、一体どんな場所なのか気になって下車した。
すごいデカイ駅なのかと思ったが、自動改札機があったかどうか記憶にあやしいくらいの意外と田舎の駅だった。駅舎に引き戸ついてたのは覚えている。
のんきに駅舎を撮っていると、乗り換えの列車がやって来た。
これを逃すと、次に来るのは30分後とかなので猛ダッシュでホームへ向かう。
なんとかギリギリ乗り込むことができたので、無事に熊本へ行けることが確定した。
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荒尾から熊本まではこの区間だ。しかし、すごく長く感じた。
駅の数も10個程度なのだが、駅と駅の間隔がかなり離れているからなのだろうか。
割りと両端が木々に囲まれている場所を走っていたせいかもしれない。
それとも体が疲れてきているからなのだろうか。
なにはともあれ、無事熊本駅へと着くことが出来た。

熊本
ようやく着いてしまった熊本駅
ここまできてやりたいことはあるのかと聞かれると、実は何もない。
ローカル線をたどって、すぐに帰れそうな場所が熊本なだけであって、条件さえ揃っていれば長崎に行っていたのかもしれないし、宮崎に行っていたのかもしれない。
そんなことを考えても熊本に来てしまった事実は変わらないので、熊本を観光することにした。
まず、熊本に着いたのが13時半過ぎだ。とにかく腹が減った。モシャったパンじゃどうもならないくらいに腹が減った。
というわけで黒亭というラーメン屋へと行った。

どうやらこのラーメン屋、かなりの人気があるらしく、店の外で30分くらい待たされた。
そして待ちに待ったラーメンと対面。
生卵が2つも入っているという変わったラーメンだったが、細麺で豚骨ベース、博多ラーメンではあまりみないメンマやもやしが乗っていた。ほんのりと焦がしにんにくの香りがする。
卵を溶く度にスープにまろやかさが強くなり、とてもやさしい味になる。
完飲。……とはいかなったが、とても美味しいラーメンだった。ごちそうさまでした。

そして腹も満たされたので、私は熊本城へと向かった。
熊本城の周辺から熊本城の天守閣へと目指していたが、一昨年にあった熊本地震の影響で天守閣が壊れていて、中には入れないとのことだった。
しかたなく城周辺から天守閣や外壁をみたりしたが、やはり地震の跡が所々見える。
石垣は、あたかも土砂が積んであったかのように崩れていたり、外壁はボロボロになっていた。

実は熊本地震が起きる2週間前に祖父と熊本城へと行ったことがある。
当時は「城なんて興味ねえわ。」程度に思い、天守閣で甲冑みたり、一口城主(城に寄付する代わりに城に名前残せる制度)の名前みたりと、退屈そうに城を見学した覚えがある。
当時の写真はあるかと、スマホのアルバムを遡ったが、悲しいことに天守閣の写真しかなかった。
この時私は後悔した。
どうしてあの時もっと城の写真を撮らなかったのだろう。
どうしてもっと真剣に見なかったのだろう。
どうして祖父ががっついて見ているのを「真剣に見てるなー」と思いながら見ていたのだろう。
そして思い出す行き掛けの代行バスの車内からの光景。
約1日に及ぶ豪雨の影響で無残にも流された橋、上流から流れてきた大きな石、土砂が流れ落ちている山の斜面。
この熊本地震もそうだ。
何度も大きな地震が地元住民や建物、熊本城まで襲った。
そして私は気づいた。
あぁ、ありふれた日常というものは突然何事も無く壊れるんだなと。
今度旅行するときは目を見開いて全てをがっついて見よう。しっかり記憶して記録しよう。そう感じた。
もしかしたら、これをこの段階で気づけたのはいいことかもしれない。
この旅は前哨戦だ。
今月末には本格的な旅が待っているんだ。
そんな感傷に浸りながら私は熊本城周辺の復興見学ルートをまわった。

鹿児島本線 普通列車 銀水行
復興見学ルートを周り、熊本を堪能した。しかし、これから帰路が待っている。
この時点で熊本は18時過ぎくらいだ。しかし、この時点で割りと終電に近い。18きっぷの旅というのはこんなものなのだろうか。
流石に列車内で何かを食べれそうでもなかったので飯を食べて買えることにしたが、熊本駅の駅ビル的存在が改修工事中で飯屋が全部閉まっているとのこと。
仕方なく私はおみやげ屋で駅弁を買うことにした。

駅弁。聞こえはかなり風情があっていいのだが、問題は食べる場所だ。
このご時世、列車内で弁当をかっ込むのは如何なものなのか。
待合室で食べるのも何かが違う。
というわけで私は駅のホームの椅子に座って弁当をかっ込んだ。
おまけに帰宅ラッシュ時に。そして発車時間までの20分にだ。
周りからの「なんでこいつここで弁当食ってるの」という視線、「何見てんじゃワレ」と気持ちだけ威嚇しながら弁当をかっ込む私。
細かい味はよく覚えてないけども、とにかく美味しかったことだけは覚えている。
次は落ち着いて食べたい。心の底から本当にそう思う。

弁当を食べ終え、しばらくすると列車がやってきた。
私は列車にのって椅子を死守した。
よく考えると今日は2時半から起きていてほぼ寝ていないのだ。
おまけに銀水という駅も荒尾の2駅先なので、ほぼ終点まで乗る。
ここまでを立ち続けるのは正直厳しい。
そして列車は熊本を発車し、どんどん銀水を目指して進む。
途中寝ていて「荒尾を過ぎたんじゃねえのか!?」と不安になることも数回あったが、実際にはそういうこともなく無事に荒尾まで着いたのであった。

鹿児島本線 快速列車 小倉行
ここは間違いなく熊本県なのである。福岡県に突入して途中、佐賀県を通過して、再び福岡県に入る。
そこまでは理解できている。
しかし、そこから数駅先に行けば山口県まで行くようなモンスター級に長い距離を走る列車がここ、荒尾駅に止まっている。
どれだけモンスター級の距離を走っているのかは次の図を見て欲しい
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いや、これ、長すぎる。
一体なにを狂っているのか、この距離を最初から最後まで快速として走るのだ。
しかし、これに乗れたら私は乗り換えすること無く帰れるのだ。
私はこれに乗り、眠気覚ましに朝買ったコーヒーの残りを一気に飲み干し、列車に乗る。
流石は快速だ。駅をどんどんすっ飛ばして、気持ちいいくらい速く進んでくれる。

途中博多に行くと多くの人が乗ってきた。と、同時に車掌と運転士も交代になった。
流石にこの長距離を運転するなんてことは無いのな。と始発の荒尾から乗っている私は思った。
あとは博多から小倉までだ。
吉塚、千早、香椎、と駅が進むにつれて減る乗客。そして深くなっていく夜といった具合。
そして終点の小倉へと着いた。
あの荒尾から小倉までを完全乗車したぞ!!と軽い鉄オタの一種を発症させたようなテンションで小倉駅を降りた。

これにて私の日帰り熊本旅行は終わりである。
画像とか当時のツイートは次のモーメントのURLを貼るので、興味がある暇人は見て欲しい。
熊本日帰り旅行