読書感想文なるものを学生の夏休みの宿題以来に書く気がします。
百合の歴史を追っていくと必ず出てくるものがあります。それはBLという存在。
そもそも百合というジャンル名はゲイ雑誌「薔薇族」にて文通欄に「百合族の部屋」が登場したところから百合として名前がついたのでは?と言われているレベルである。*1
また、あのマリア様がみてるでも、「BLすごいけど男ばっかりで退屈、女の子がいっぱい出てくる話も欲しい」*2がきっかけだったりと、なにかとBLが対になっていることが多い。
何かとBLが軸として百合が発生したと捉えると、やはりBLを知らずに百合は言えないのではと考えた。また、BL市場は一大市場となっており、BL専門誌は百合よりも雑誌の数が圧倒的に多い。そして同じ同性愛を描く点に置いて、何を重要視されているのか、何を表現しているのか。これらを知るためにBL漫画を読むことにした。
ちなみに私はBLに関しての知識はあまりない。とにかく「業が深い」「オメガバースは沼すぎる」という偏見しか持っていない。あと、リンクスという作品を読んだことがある程度。
とりあえずBL有識者におすすめを聞いて漫画を借りた。作品は「カーストヘヴン」の1巻である。
いやこれ普通に面白かった。定期的に行われるトランプ捜索大会で見つけたトランプによって学校内のカーストが決まるという設定で、定期的にカースト上位が下位に落ちたり、下剋上があったりする。そしてそのカーストは絶対であり、カーストにあった振る舞いをしなければならないという。
この設定が結構上手にできていて、BL的な要素を抜きにしても面白かった。
BL的な要素については、キャラ同士がいちゃつくというよりも性的欲求の発散というものに近かった。
攻めと受けの概念
百合との一番の違いを感じたのは、「攻めと受け」の概念だ。
百合においても攻めと受けの概念はもちろんある。結京と京結は別物だし、みぞのぞと、のぞみぞは違う。しかし、百合の場合は攻めと受けが違ったとしても、CP名が違うわけでもないし、絶対に攻めが固定というわけでもない。つまり百合はBLに比べてかなりリバを容認する傾向にあると考えている。
ところがBLではリバ容認はあまりないと聞く。ABとBAは違うとは言っていたが、なんとなくそれを理解した気がする。
この作品では、ゲームによってカーストが決まることで、作中世界での絶対的なカーストが決まり、そのカーストに逆らうことは許されないことである。この設定がすごく効いていて、カーストという背景があるからこその攻めと受けが明示的になっていると感じた。カースト上位がカースト下位を容赦なく性奴隷のように、己の欲の発散に使っていることはまさにBL特有であると感じた。
キャラ同士の関係性
今の百合の定義としては「女性と女性の間に生まれる感情を描いた作品」という定義付けが一般的であると考える。百合オタクとしても、この間柄にどれだけのつながりと感情を置くのかで作品の質は変わると思っているし、ここに重点を置けば置くほど強い百合になると思います。
ハヤカワ・オンラインの「百合が俺を人間にしてくれた【2】--対談◆宮澤伊織×草野原々」に出てくる強い百合と弱い百合の話が今の百合の中で純粋かつパワーを持った百合か否かを判断するには最高の話をしているので、このブログ読んでる百合オタク全員読んでくれ。https://www.hayakawabooks.com/n/n71228eb75bb0
閑話休題。とにかく百合はセックスとかなどの直接的描写ではなく、基本的には感情や行動などの間接的な描写で相手をどう思っているかを表すことが多い。
ところがカーストヘヴンの1巻ではこのような描写はあまり無く、キャラ同士の関係性は先程述べたカーストがメインであった。やはりBLはキャラ同士の感情を構築するよりも、上下関係をキャラ同士の関係性として扱い、その関係をベースに攻めと受けを考えるものがBLだと感じた。
とはいえ、先程話したような百合のような感情やキャラの関係性についてフォーカスを当てないというわけでもない。このカーストヘヴンでは、カースト最底辺をいじめるどころか手を差し伸べるキャラもいる。この手を差し伸べるキャラは「カーストなんてどうでもいいよ」と言い、いじめられていたキャラとの関係性を結ぼうとする。こういうカーストや上下関係を完全に無視し、対当な関係として人間関係を築きあげる部分は非常に百合に近い感覚の描写であると感じた。
まとめ
やっぱりカーストヘヴンという作品がホモセの有無問わず、設定の活かし方がうまいんじゃねえのかと思う。こういう設定のおかげで、いかにBLというジャンルが上下関係や攻めと受けを重要視するのかが垣間見れた気もするし、百合との違いもいくつか見れて非常に良かった。
でもやっぱり男同士のセックスって見るとキッツと思うし、あんなにホモセする必要あんの?とは思った。